慣用句と住宅事情
"wake up on the wrong side of the bed" あるいは "get out of the bed on the wrong side" といった表現が英語にある。「朝から機嫌が悪い」「朝からやることなすこと裏目に出て機嫌が悪いものだからなおさらやることなすこと裏目に出るものだからなおさら機嫌が悪いものだから……」みたいな感じだ。
初めてこの言いまわしを知ったとき、おれは即座に「ああ、住宅事情がちがうんだなあ」と思った。だって、考えてもみてちょーだい。ベッドの the wrong side (というのは、日によってちがうのかもしれないのだが)に降り立てるということは、少なくともベッドの両サイドが空いているのである。日本だったら、たいていベッドの片サイドは壁にくっついている。ビジネスホテルみたいな配置ですわな。よほど広い部屋を寝室専用にでも使っているのなら、ベッドの頭側の短辺を壁にくっつけて、長辺の両側を人が降り立てるくらいに空けるというレイアウトも可能だろう。つまり、ラブホテルみたいな配置ですわな。
要するに、こういう言いまわしが日常の中から出てくるということ自体が、彼らがむかしから広い部屋に住んでいることを物語っているのである。下手すると、ベッドの全サイドが空いているなんてレイアウトすらあり得る。お姫様の寝室みたいな配置ですわな。
うちなんか、ベッドの足元側の辺しか空いてないぞ。the only side なんである。降り立ちたくても、けっして the wrong side には降りられないのだ。だからおれは、英語的には「朝から機嫌が悪く」なりようがないことになる。Q.E.D.
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