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2005年12月11日 (日)

枯淡のメトロン星人『ウルトラマンマックス』

 今回の『ウルトラマンマックス』は「狙われない街」、またもや実相寺昭雄監督作品。六平直政、寺田農、堀内正美と、まあ、どえらい豪華キャスト。いやもう、お子様は堂々とほったらかしで、おれたちの世代のための作品であった。

 『怪奇大作戦』の「S.R.I.(科学捜査研究所)」に看板をそっくりに作った「P.S.R.I.(警察科学研究所)」が登場、そこには岸田森の演技を意識しまくった堀内正美演じる研究員がいる。日本語の「CT」を「スィーティー」などとスカして発音するあたり、藝が細かい。ほかには、ガバドンになるはずの落書きとか、怪獣倉庫に屯するシーボーズ、ミクラス、ゴドラ星人などなど、『ウルトラセブン』の「狙われた街」の続編(?)らしい、ウルトラ大人にはたまらないお遊びがいっぱい。

 メトロン星人が再登場するんだから、また侵略してくるのかなあという大方の予想を裏切り、なんと、あのときのメトロン星人がじつは市井の片隅に匿われて生きていたというびっくりの設定。しかも地球侵略をすっかりあきらめている。というか、放っておいても人類は滅びることを確信したので、わざわざ侵略するまでもないという悟り(?)の境地に達している。メトロン星人は、ウルトラマンマックスに挨拶だけして、もはや侵略する価値もない地球を去ってゆく。いやあ、渋い話だ。これは子供にはわからんわ。

 タイミング的に、妙に考えさせられたよ。まあ、おれだってネット猿、ケータイ猿だから大きなことは言えないが、結局、前回のメトロン星人の作戦は、ここ四十年でひとりでに成功してしまったと言えるだろう。子供を安心して学校にもやれない塾にもやれない世の中だ。おれみたいなのが表を歩いているだけで警戒される。「狙われた街」の「われわれ人類はいま、宇宙人に狙われるほどお互いを信頼してはいませんから」安心しろ、これは遠いとおい未来の物語なのだという、子供番組にしてはずいぶん苦いナレーションに、実相寺監督は今回の作品を撮ることでさらにオチをつけたことになる。昭和は遠くなりにけり、か。

 ちなみに、あの怪獣倉庫は、円谷プロのホンモノである。「どうもどっかで見たことあるな」と思って調べてみると、怪獣マニアのミュージシャン・福田裕彦氏のブログに、今回の撮影エピソードが豊富な写真と共に紹介されていた(残念、もう消えてる)。実相寺監督も寺田農も渋い。六十過ぎてもこういう仕事ができる男たちっていいなあ。



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