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2005年8月18日 (木)

終戦記念日の『ブラック・ジャック』

 夏休みだもんだから、ひさびさに『ブラック・ジャック』をリアルタイムで観る。今回のエピソードは、「戦争はなおも続く」(原題同じ)。むろん放映日を意識した手塚眞のメッセージだろう。

 今回のは、さすがにいつもと少し処理のしかたがちがう。原作は往々にして救いのない終わりかたをするため(そこにヒューマニズムの蜘蛛の糸にすがらざるを得ない人間というものへの一縷の望みと救いがあるのだ――なんてことは子供にはちと難しい)、このアニメシリーズでは、相当わかりやすい希望を感じさせるエンディングに変えていることが多いのだが、今回ばかりは、かなり絶望的な重いものを子供の視聴者の前にあえて投げ出している。原作では、BJが治した青年は戦死してしまうのだが、今回のアニメでは戦場に赴くところで終わっている。これがこの時間帯の縛りとの精一杯の妥協というところだろう。どのみち、子供の視聴者だって、この青年が無事帰ってくるとは思うまい。無事帰ってきたのだとしたら、何人もの人を殺して帰ってくるのだと思うだろう。この終えかたでも、青年が戦死するのとさして重みは変わらない。

 現代の子供向けに、小賢しくわかりやすく薄めて流すということが、このテーマばっかりはできないのだ。なぜなら、大人も回答を持っていないから。少なくとも手塚眞の良心は、子供向けだからといって、これ以上に砂糖をまぶしたものを与えることを許さなかったということだろう。手塚眞は、手塚治虫の遺産を伝える任を負うことができるアーティストに立派に育っている。手塚眞がいじくりまわすのなら、安心して手塚作品を委ねられるというものである。

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