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2005年5月20日 (金)

たまえ

 自分では使わない、使った憶えすらない言葉に、「〜したまえ」というのがある。いやあ、ほんとに使わんですね。どんなに年下の人間にも、目下であることになっている人間にも、「ちょっとこっちへ来たまえ」などと言ったことがない。そう言っている自分というのを想像すると、なにやら背筋に怖気が走る。気色悪ぅう〜。

 ドラマなんかだと、たとえば、財前教授みたいな人が、シャウカステンに掲げたX線像かなんかを指差しながら、傍らの若い医者かなんかをつかまえて、「この部分を見たまえ」てなことを言うとサマになるわけだが、実際、こんなことを言っている人、言いそうな人は、少なくともおれの日常には見当たらないのだなあ。

 なんというか、人の上に立つことが板に着いている人が言わないと、非常に滑稽な感じがする。おれは、冗談めかした言いかたを除けば、一生使わんだろうなあ。

 なぞなぞ。場を外さないよう、いつも命じられている職業は?

 ――板前。

 チャンチャン。


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